2015年の6月末、iPhoneを片手に東急世田谷線の山下〜松陰神社前間を歩きました。
東急世田谷線は、三軒茶屋〜下高井戸を結ぶ軌道線です。路面を走る区間こそありませんが、むかし渋谷から出ていた東急玉川線、通称「玉電」の面影を残す路線です。主に国道246号の上を走っていた渋谷〜二子玉川(当時は二子玉川園)間の玉川線は昭和44年に廃止され、その後に新玉川線(現在の田園都市線・渋谷〜二子玉川間)が建設されました。しかし、三軒茶屋〜下高井戸間の支線は並行する太い道路もないことから残され、世田谷線と名前を変えて今日も運行されています。
なんとなくというか、思いつきというか、いつかBLOGで世田谷線沿いの写真を撮ったり、サイクリングしたりといったネタをやろう、そのためのロケハンのつもりで歩いてみよう——ていどの気持ちだったのですが、小田急線の豪徳寺駅(世田谷線山下駅のすぐそばです)を降りた瞬間、あまりの蒸し暑さに後悔しました。とはいえ来てしまったし、疲れたら電車に乗ればいいやという気持ちで、歩き始めたのです。
とはいえ、いざ歩き出してみれば、世田谷線の電車や沿線の風景を夢中になって撮影している自分がいました。
なんだか、そそるお店が多い。たこ焼き屋の前でしゃべっている高校生二人組が、意味もなくうらやましく思えたりします。
宮の坂駅前には、元玉電の80形電車が保存されています。でも、車体の番号は「601」。実はこの車両、玉電の廃止後ほどなくして江ノ電に譲渡されていました。江ノ電で引退した後、里帰りを果たしたというわけです。ちなみに、世田谷線に残っていた80形が引退したのは、2001年のこと。もうそんなに経ってしまったのですね。
今ではカラフルに塗られ、ときにはラッピング広告をまとった300形電車が行き来しています。
松陰神社前まで来たら、疲れてしまいました。活気ある商店街の様子をiPhoneで撮った後、世田谷線の電車で三軒茶屋まで移動します。
三軒茶屋駅を出て、どこかでお茶でもしようかと思い街をあるいているとき、西の方の空がすごい色をしていることに気づきました。そこでふと思い出したのが「キャロットタワー」の展望台です。急いでキャロットタワーのエレベーターホールに向かうと、同じことを考えている人が少しずつ集まり始めていました。
蒸し暑い中を歩いた疲労も、汗を吸ったジーンズのせいで股ずれしたイヤな感じも、全部吹き飛んだのは言うまでもありません。
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。クロスバイクと小田急ロマンスカーが好き。