20年ぶりくらいに入ってみる新橋の立ち喰いそば「ポンヌッフ」

新橋駅の銀座口、交差点に面したガード下にある立ち喰いそばの「ポンヌッフ」。

その看板には「名物」と書いてある。何がどう名物かというと、その存在が……だろうな。

ハタチ前後だった90年代中頃、勝どき橋のたもとにある某R系の制作会社営業部でアルバイトをしていた。

当時、その手の会社で営業アシスタントといえば、トラフィックが重要業務だ。DTPにはいち早く取り組んでいたが、MOでデータをやりとりしていた時代。もちろんアナログの仕事もたくさんあったから、指定紙と写真を取りに行ったりもする。

DTPでもアナログ(といっても電算写植だが)でも、ゲラや青焼き、色校をハンドキャリーしていたわけだ。

R社やそのグループは新橋界隈に多い。また、R社以外のお客さんのところへ行くのにJRに乗るなら、勝どき橋からであれば東京か有楽町か新橋か……といったところ。新橋であれば社内用シャトルバスが出ていたから、新橋経由になることが多い。

冬場。日が暮れて寒くなり、これから入稿素材を取りに行って、会社に帰ってもうひと仕事だけど、それにしてもお腹が空いたな……なんてときは、だいたいこの「ポンヌッフ」でそばを食べることになる。

そんなこんなを思い出し、久しぶりに入ってみる。それにしても「ポンヌッフ」である。私は、セーヌ川に架かる橋「ポンヌフ」(新しい橋、の意)を見たことはない。

ポンヌッフでは「天玉そば」とは言わない。「かき揚げ玉子そば」である(440円)。

かき揚げは、しっとりとした仕上がりとなっていて、これはこれで悪くない。バリバリとしたかき揚げのように口の中を切ることだってないから、人に優しいね。

小田急沿線の「箱根そば」に慣らされた私には、久しぶりに食べるポンヌッフのそば、そして店内の雰囲気は、すべて異質なものに思えた。

そばを口に運びながら「こんなだったかな」と、頭の中でつぶやく。

しかし、私を含めて3人だった店内に、もうひとり客が加わっただけでだいぶ窮屈な感じになってきた。そして客のひとりが、カウンターにひじをついて、そばをズルズルとすすり出す。

長居は無用だ。さっさと食べ終わり、外に出る。

夜の8時半を過ぎたあたり、すでに新橋駅前にはできあがったサラリーマンが多い。あるいは公務員かもしれない。「こっちは今日、まだ仕事あんだよね」と思いながら、浮かれた連中をかき分けつつ歩き始めた。

そうそう、この感じ。

リンク: ポンヌッフ – 新橋/そば [食べログ]