先週、個人的に注目するふたつの自転車が発表になりました。
ひとつめは、こちら。
RITEWAY(ライトウェイ)という日本のブランドの「STYLES(スタイルス)」です。以前から発売されているものですが、細かな改良が加えられた2020年モデルが登場しました。
STYLESは、細身のルックスが特徴の鉄(クロモリ)フレームで、手前に引かれた形状のハンドルや各部のパーツによってクラシカルな雰囲気を出している街乗り自転車です。
マニアのための自転車ではなく、あくまでも普段の暮らしの中で自転車を楽しみたい人に向けたものです。
多くのクロスバイクやロードバイクには、フロントギアが2段や3段、備わっています。しかし、STYLESは街乗り自転車として割り切って、フロントギアは1枚(シングル)です。ただし、STYLESが「街乗り用だから」と明らかに割り切っているポイントは、それくらいです。
いかにも街乗り用っぽい、ゆるいルックスをもちつつも、乗ってみると「結構遠くまで行けるんじゃないか?」と思わせるほどの気持ちよさ、楽しさがあります。
実はキャリア(荷台)やフェンダー(泥除け)を取り付けるための台座は豊富に備わっていますし、この2020年モデルからは、フロントギアを2段や3段のものに交換できるようにフレーム側の準備はできています。
つまり、買ってきたままでゆる〜く楽しんでもよいし、もしSTYLESをきっかけに自転車にハマれば、カスタムしてもっと幅広く楽しめる——そんな自転車になっているのです。
さて、先週発表された中でもうひとつ注目したのが、こちらです。
サイクリングアパレルブランド「narifuri(ナリフリ)」の中で、実際に自転車ショップを運営している「charifuri(チャリフリ)」から登場したオリジナルフレーム「CF01」です。
このCF01はフレームセットといって、自転車として完成した状態ではなく、フレーム(とフロントフォークおよび多少の付属品)だけで販売されます。購入した人は別途パーツを用意するなどして、購入店で組み付けてもらったり、もしくは自分で組み立てる必要があります。
そういう意味ではCF01は「マニア向け」の商品と言えるでしょう。先ほどのSTYLESとは対照的です。
しかしこのCF01、自転車好きのための商品であり、見た目のインパクトもかなりあるものの、一方でガチガチにイメージを絞り込んだ商品でもないのが面白いところなのです。上で紹介したのはコミュータースタイルでしたが、それだけではありません。
このようにドロップハンドルを組み合わせて、スポーツ走行に適した1台に仕上げることもできます。
さらには、ブルホーンバーとシングルギアでシンプルなストリートバイクに仕立てるのもOKです。
つまり、CF01としての明確な個性を発しつつも、乗る人の発想を妨げない「自由さ」が、このフレームにはあります。
RITEWAY STYLESとcharifuri CF01、ふつう同時に紹介されることはないであろうこの2台に共通しているのは「作り手が明確なメッセージを発しているが、乗り手に対して自転車の可能性や使い方に蓋をしていない」ということではないでしょうか。
もちろん、作り手が「こう使え」と言わんばかりのプロダクトの中にも、魅力的なものは少なくありません。しかし「(実は)自由に使える」というのも、作り手からの強いメッセージなのです。
「街乗り自転車だからこれくらいでいいだろう」という後ろ向きな割り切りや、絞り込んだ挙句にどこにも実在しないようなペルソナが横行しがちな時代にあって、ある種の「救い」のようなものを、STYLESとCF01から私は感じずにはいられません。
関連記事: RITEWAY 2020年モデル:街乗り用セカンドバイクにいいかも!? クロモリフレームの「STYLES」 – CyclingEX
関連記事: cahrifuriのオリジナルフレーム「CF01」がついに正式発売 – CyclingEX
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。クロスバイクと小田急ロマンスカーが好き。